ピアノができるまで ―ヤマハ編―

世界有数のピアノ工場、ヤマハ掛川工場

静岡県浜松市は、日本一のピアノの町として知られる街です。
ヤマハ、カワイ、ローランドが全て集まり、この他にも中堅楽器メーカーや、楽器部品の工場が集まる街として古い歴史を持っています。
2019年に小説・映画「蜜蜂と遠雷」で話題になった「浜松国際ピアノコンクール」の舞台としても知られています。

そんな浜松市のほど近く、静岡県掛川市に「ヤマハ掛川工場」はあります。
敷地面積25万㎡(東京ドーム、5個分の広さ)もの広さで、従業員600名が働く日本一大きいピアノ工場です。

エントランス近くのアスファルトにはかわいらしい鍵盤のデザインがされています。
また広い敷地内にはなんとピアノの運搬用の踏切があります。当然ですがピアノが主役の工場なのです。

1台のピアノを作るために必要な部品はおよそ8000点で、部品は自社で生産機から開発し、製造しているそうです。
ピアノづくりには機械が製造する工程と、人の手でしかできない工程があり、熟練した職人がピアノづくりを担っています。

ピアノ制作

ピアノづくりは大きく、以下の4工程に分けられます。

  • ボディ(ピアノの骨格)
  • 張弦
  • 鍵盤
  • 音色

1.ボディの制作

側板作り

ピアノの骨格であるボディは様々な木材を組み合わせて作られています。
側板に使われているのはマホガニーという木材です。木の香りが漂う工場内でまず薄い板をつなぎ合わせて長い板にします。
さらにこの長い板を重ね合わせて束にします。このように板を重ねあわせることにより強度を出しています。
グランドピアノの曲線の部分はどのように作られているがわかりますか?
この長い板(合板)を型にはめてプレスするのです。プレスした木材を1時間ほど放置するとピアノの側板が完成します。
 
そもそもあの曲線は何のため?

ピアノの側板はどうしてカーブを描く形をしているかご存知ですか?
ピアノは低い音を出すためには長い弦を張り、高い音域を出すためには短く弦を張る必要があります。
そのため左手側(低音域)は縦に長く、右手側(高音域)になるにつれて短くなるような曲線になるのです。

響板作り

響板はピアノの心臓部と言われる部分です。
スプルースやエゾなどのマツ科の木材を使って製材をつくり、長い年月をかけて天然乾燥と人工乾燥を施し、適切な含水率に整えてから使います。
板材を何本も貼り合わせてカットし、厚みも整えてから、さらに完成後の送り先の気候条件を考慮した乾燥度合いに乾燥させます。
そして響板の木目と直角になるように「響棒」を貼っていきます。
これによって音の振動が一定になり、強度も補強されます。

2.張弦

ピアノの弦は音域に合わせた太さの弦を ①低音域 ②中音域 ③高音域 と一本ずつ手作業で張っていきます。
この作業は冬場でも扇風機をつけるほどの重労働だそうです。一つの音につき低音域から高音域になるに従って1本から3本と弦が増えていき、最終的には合計230本もの弦を張ります。

3.鍵盤の制作

鍵盤は一枚の板からできています。この一枚の板を短冊状にカットしてピアノの鍵盤にします。
黒鍵は木材ですが白鍵盤の表面はプラスチック素材で、人口象牙(アイボライト)という特殊樹脂を使用しています。
また鍵盤は動きがスムーズになるように人の手で調整されます。
鍵盤の固定するための小さな穴とそれを止めるピンの動きがなめらかになるようにしなければなりません。
木によって硬さや木目が異なるため生じる誤差を、人の手の感覚によって88鍵盤一つずつ調整するのです。

4.音色

作られたピアノは出荷前に整音作業をおこないます。
整音作業は最も職人の技術が求められる作業です。整音作業を行うには、およそ10年以上のスキルが必要とされます。
職人は音色、響きのバランスの調整を行います。
具体的には弦を叩く羊の毛(フェルト)で作られたハンマー部分を針で刺して穴を開け、音を調整します。
張ったばかりのハンマーは硬く金属的な音がしますが、針を刺してほぐすことで柔らかい音になっていきます。
このように音の硬さが出荷できるレベルかを確認していきます。

長い年月をかけて

このようにしてピアノは一台一台丁寧に手間をかけて作られています。
木材を乾燥させる時間も含めると、ピアノ一台を作るためには実に10年以上の歳月が必要になります。
ピアノの一つ一つに長いドラマと職人の業が込められていることを覚えて、長く大切に弾いていきたいですね。

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